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大河ドラマでやったらいいのに!山本一力著 『ジョン・マン』

こんにちは。

日本では地域によって春一番が吹いたとか、こちらで春を感じ始めるにはあと1ヶ月位はかかりそうです。

よく日本の家族や友人に「そっちは寒そうだけど、いったい何やって過ごしてるの?」と聞かれます。う、うん、主に仕事と大学とランニングなんですけどね… まぁ、家に篭ってってことならば、料理したり、日本のケーブルテレビみたり、よく読書もしています。

ただ渡米して以来、読書量が減ったのは事実。ニューヨークには紀伊国屋書店がありますし、BOOKOFFも出店しています。それでも流石に輸入書籍は高く日本の約1.5倍の値が付いていますから、何だかもったいなくて購入を躊躇うようになってしまいました。

まあ電子書籍でもいいのですが、やっぱり紙を捲って読みたいのです。この辺りは完全に嗜好の問題かと。

そんな読書量が少なくなったこの頃ですが、なかなか良かったのがこちら。山本一力さんの『ジョン・マン』です。

ジョン・マン 波濤編

ジョン・マン 波濤編

 
 

 ご存知、“ジョン万次郎”の物語です。著者である山本一力さんは高知県出身なのですね、万を時して“ジョン万次郎”こと中浜万次郎の物語に取り組んだのだとか。

 中浜万次郎については「漂流していたところをアメリカの船に助けられて、アメリカに渡り、英語を習得して、幕末の開国騒動で活躍した数奇な運命の人」位の薄ーい前知識しかなかったのですが、この本、本当に読みやすく、頁あたりの行数が少ないレイアウトで、さくっと読めてしまいました。現在、シリーズ4巻まで発行されています。
物語自体も主人公である“ジョンマン”が大変魅力的に描かれていて、話にぐいぐい引き込まれていきました。
 
私がこの本、面白いと思ったのは主に以下の2点です。
 
◆当時の日米の捕鯨実態について書かれている
歴史の授業で習って以来すっかり忘れていましたが、ペリーの開国要求には、漂流民の保護、捕鯨船の水、食料、薪の補給があり、その大きな目的は捕鯨船のための補給基地の確保」でした。
そう、万次郎は鯨漁が盛んだった土佐、中浜の漁民出身であり、漁の途中の悪天候により難破、アメリカの捕鯨船に保護されるのです。
本作では、アメリカの船がどうして彼方日本近くまで捕鯨にやってきていたのか、また日米の鯨に対する考えの違いなどが書かれていて大変興味深かったです。
 
◆主人公“ジョンマン”たちの普遍的な人間力が素晴らしい!
 この作品の1番の魅力は主人公の“ジョンマン”でしょう。仲間とともに漂流していたところをアメリカ捕鯨船に救助されます。命を救われたものの、言葉の通じない日本人など船員たちにとっては役立たず以外のなにものでもありません。食料、水、嗜好品など全てに限りのある船上生活、明確に“役立つ”自分を差し出せなければ、そこに居場所はないのです。
聡明な万次郎は、はじめは身振り手振りで、次第に少しずつ習得した片言の英語で、アメリカ人船員たちと意思の疎通が出来るようになっていきます。作中、万次郎は遠目の利く設定ですが、その能力で船の捕鯨に貢献し、船員たちに認められる存在になっていきます。
そしてともに救助された漁師4人の堂々とした海の男ぶり!もちろん英語は理解できませんが、彼らの漁師としての技は言葉を超えた確かなもので、船員たちの訝しげだったまなざしを好意的に変えていくのです。
なにより万次郎の新しいことを吸収しようという好奇心、骨身を惜しまない船での働きぶり、礼儀正しさ(このあたり古い時代の日本人の美点ですよね)、彼の人間性が船中でのエピソードを通じて描かれていてぐいぐい話に引き込まれました。
この万次郎と仲間たちの気質って、いつの時代、どんな環境にあっても、他者から受け入れられ、自分の道を切り開く普遍的なものだと私は思います。
他にも万次郎の才能を見出し、アメリカで教育を受けさせた船長のホイットフィールドも大変魅力的に書かれています。
 
あっという間に既刊4冊を読破してしまいました。アメリカに渡った万次郎が現地の小学校を卒業するところまでが、4巻の望郷編です。残念なことにこの作品、年に1冊ペースの発行みたいなんです、、、いったいいつになったら日本に帰れるのかw
続きがなかなか読めないことだけが残念です。
 
これ、ホントに良い作品だなー、使われている言葉も割りに簡単だから、小学校高学年から中学生が読んだらいいのにと思います。主人公の万次郎も遭難したときは14歳ですし。早速、教員をしている兄に推薦しておきました。
そして、この万次郎の物語、アメリカでも発見しました!
Heart of a Samurai

Heart of a Samurai

 

 こちら、アメリカの児童作家、マギー=プロイスが書いた『Heart of a Samurai』サムライって…万次郎は漁民出身ですがw まあ“彼の生き様が侍”ってことなんでしょうね。

なかなかアメリカでも評価の高い本で、学校での教材になったり、児童文学の最高賞を受賞しているようです。彼の生き様が現代のアメリカ人作家の執筆意欲を駆り立て、アメリカの子供たちをわくわくさせているなんて、なんだか嬉しいですね。日本語訳も出版されていました。

ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂

ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂

 

 今年の大河ドラマ『花燃ゆ』はいまいち視聴率が良くないと報道されていますが、このあたりで、この『ジョンマン』中浜万次郎の物語を取り上げてみたらいいのに、個人的に思っています。

まあ、作中出てくるのが外国人ばかりになってしまうし、アメリカのロケも必要ですし、船上のシーンも多いでしょうから難しいのですかね。

それにしても、子供の頃から読書感想文が嫌だった私が書評(そんなたいしたものではない)もどきを書くとはね…それくらいよかった作品ということで!

また、面白い作品に出会えたら嬉しいなと思います。

それでは。