ここではない何処か☆村上春樹著『ラオスにいったい何があるというんですか?』
こんにちは。
相変わらずはっきりしない天気です。私も何だかやる気が起きず(いつものことですが)、電子書籍で漫画の一気読みなどしています。
奇しくも日本はGW、暇を持て余す人を狙った無料の試し読みがいつもよりも充実していているので、ますます漫画ばかりを読む…。
最近の漫画はジャンルが多種多彩、行くとこまで行ってしまった、アイデアも出尽くした感じですね。
さて今日は、たまには漫画ではなく『ちゃんと活字を読みましょう』ということで、お友達に借りて読んだ、村上春樹著『ラオスにいったい何があるというのですか?』について書きます。
内容に対する感想ではなくて、読んで思い出されたこと、についてかな。
これは、タイトルがラオス〜、と付いていますが、ラオスの話だけではなく、著者が世界のあっちこっちに行ったことを綴った紀行文集。
村上氏がランナーであることは、ランナー界隈では有名な話で、この本にもボストンマラソンのボストンや熊本を走る話が出てきます。
紀行文、旅行エッセイって面白いですよね。
行ったことのない、行くあてもない遥か彼方について書かれたものも興味深いし、
自分が暮らした街や訪れたことあるところについて書かれたものも、「ふむふむ、そうだよねー」と情景を思い出してまた楽しめる。
その意味で、本作には、先月訪れたばかりのボストンや、ピノノワールラバーとしては是非とも行ってみたい街、ポートランド(米国、オレゴン州)が登場していて、正によい時に読んだな、と思いました。
特にボストン。
村上氏は、実際に数年間、ボストンに暮らしたことがあり、ボストンマラソンも数回走っているから、街に対する愛着がページの端々に散りばめられています。決して体温が上がったような書き方はしていないんだけど、よく分かる(笑)
村上氏は、私も印象に残っているチャールズ河畔について、
“人々はまるで何かに引きつけられるように、このゆったり流れる河のほとりに集まってくる”
“たくさんの水を日常的に目にするというのは、人間にとってあるいは大事な意味を持つ行為なのではないだろうか”
と綴っています。
マラソンの週末に出かけたこともあり、沢山のランナーがチャールズ河のほとりを走っていたんですよね。
美しい川辺に美しく鍛えられたランナーたち。それは正しく絵になっていて、本当に素敵でした。
川ではないですが、Boston College近くのChestnut Hill Parkも素晴らしく美しくて、わざわざ車を降りて散歩してしまったほどだったんですよね。
“ここを走るのが日常”というような素敵なランナーたちを見かけました。
NYに置き換えるなら、セントラルパークの貯水池周りかな、それともハドソンリバーサイド?
残念だけれど、水辺のランニングコースはボストンに軍配かな。。。(ランニング環境としては、NYにはセントラルパークがあるから決して負けてはいないと思う!)
それ程に印象的な美しさでしたね。
そして、ボストンマラソンについては、
“そこには情景的な魅力がある”
“これが我々の考えるマラソンの姿である”
と語っています。
私はまだボストンを走ることを許されたランナーではないから実のところは分かりません。今の段階で分かったとは決して言ってはいけないでしょ。
けれど、マラソンの週末、ボストンの街のなかにいて、この大会が特別なものだということだけはひしと感じていました。
私のラン仲間のひとり(歴戦の猛者)が、初めて走ったボストンを一言、
“The Marathon”
と表したのが、きっと村上氏の言わんとするところなのでしょうね。
いつか私もその“情景的な魅力”を味わうことが出来たらと強く思います。
さらにボストンの街の魅力について、“野球と鯨とドーナツ”*という小タイトルにして書いているんだけれど、やっぱりシーフードは食べるべし、と勧めています。
*注 野球→ボストンレッドソックス、鯨→ホエールウオッチングかつては捕鯨、ドーナツ→いわずもがな、ダンキンドーナツ
そう、ボストンはシーフードが美味しいんです。特にその新鮮なシーフードを使っているイタリアン。
私たちがボストンを訪れる動機のひとつで、今回もイタリアンで食事しています。
旅行中なので、味とコスパ重視、気取らない食堂みたいな店に行くんですけど、今回のも美味しかった。
☆Giacomo's
こちらはイタリア街のあるNorthendと他にSouthendに二店を出しているレストラン。
私たちが行ったのはSouthの方で、なぜならこちらの方が空いているから。
それでも開店の5時前から店の前には行列が出来ていたし(こちらでもボストンランナーばかりだった!)、お客を捌きに出てきたお姉さん、
“今日は祝日の週末だから激混みなの。長居はやめてね、50分くらいでお願いね”
と超強気な発言(笑)でも決して不思議と嫌な感じではなかったのよね。
私たちは2人ということもあり、開店と同時にカウンターに座ることが出来、テキパキ働くスタッフの姿を目にして感心しきりでした。
そう、こういう店は美味しいんだ。
☆カプレーゼ
出来たてモッツァレラがとろーりのトマトサラダを前菜にして、
☆ペスカトーレ
海の幸(ロブスター、エビなど)がこれでもかと入ったパスタ。はっきり言って雑な作り(笑)なんだけど、旨味が強烈に効いていて美味しい!手捻りのショートパスタもソースが良く絡んでよかった。
もちろん、グラスに並々と注がれた白ワインと一緒に。こんなに景気良く注いでくれて確か4ドルだか5ドルですよ、この店。。。ビールもボトルだけど同じく安いの。
他にメインで鶏肉料理も食べたけれど、そちらは普通で、やっぱりシーフードを食べたら良かったですね…。
ボストンのがちゃがちゃ系イタリアンとしては、他に“Dairy Catch”とか名前が上がるけれど、こちらの“Giacomos”、大満足でした。
本作では、他にイタリアのトスカーナ、フィンランドのヘルシンキ、ギリシアの島などについても書かれていて、GWに何処かへ行かずとも、さながら旅行気分に浸れます。もしくは新たなる旅への欲求を掻き立てられたり。。。
私はアメリカにいるから、そもそもGWは関係ないんですけどね。
最後にもうひとつ、印象に残った一文を。
“かつて住民の一人として生活を送った場所を、しばしの歳月を経たあとに旅行者として訪れるのは、なかなか悪くないものだ”
私もNYをそんな心持ちで歩く日がそのうちにやってくるんでしょうか。
なかなか楽しめる一冊です。1650円で各地にバーチャルトリップですから。
それでは。